闇黒日記?

にゃもち大いに語る

ニーチェ『ツァラトゥストラ』讀了

秋山英夫譯編の教養文庫版を讀んだ。叮嚀かつ親切な譯註附きの學生さん向けアブリッジド版で俺みたいなコンジョナシさんにはおすすめ。

ニーチェは或意味眞面目に讀んでも仕方がないので何でこいつこんなに偉さうに下らない事言つてゐるんだらうと馬鹿にしながら讀むと良いと思ふ。
キリスト教的價値觀だと現世は大して價値が無くて「天に寶を積め」と云ふ事になつてゐるのだけれども、それは神の陰謀だ、我々人間は現世をこそ肯定すべきである、その時我々は人の域を超えるのだから――と、さう言つてニーチェは哄笑して見せるのがこの『ツァラトゥストラ』と云ふ本。
このニーチェの價値觀は、極めて現代的な價値觀で、「健康的」であるやうに見えるので、實に多くの現代人が意識的無意識的にかかはらず盲目的に信じ込んでニーチェ的と言ふよりツァラトゥストラ的行き方を實踐してゐる。この御近所の典型はかの惡性氏なのだけれども、一方でこれが「一面の眞理」或は「半面の眞理」である事は間違ひなく、本氣でそんな現世のみ肯定あの世なんてものは糞的世界觀でやつて行かうとするとそれはそれで××××じみた事になる。實際、『この人を見よ』を見るまでもなく、本書は相當電波が入つてゐるのであり、そこに笑ひが見えてゐても決してニーチェは正氣を保つてゐるのでない。笑ひは健康的であると言はれるけれども、馬鹿笑ひは屡々狂氣を含むものだ。奇妙に機嫌よく偉さうに説教ぶつこいてゐる親爺には氣を附けた方が良い。

讀み方は人それぞれとか適當な事を言ひつゝ、案外この本も讀まれてゐなささうだから、讀んだ事がない人は斜め讀みで良いから讀むと良いよとか何うとか云々。