闇黒日記?

にゃもち大いに語る

憲法めも:法治主義・法の支配

……法治主義・法の支配
立憲主義国家では、議会は法律を制定し、その法律を実施するのが行政であり、解釈するのが司法であると考えられるが、ドイツでは、特に専制的な行政を抑制する趣旨から、法律による行政に力点を置いて「法治主義」という言葉を立憲主義と同意義のように用いた。法治主義が、他面、法律の内容をおろそかにし、法律の形式を用いさえすれば国民の権利を制約できると解釈されると、立憲主義は空洞化される。そのような心配は戦前のドイツおよび日本で現実に現われ、このようなことから立憲主義権威主義官僚主義を横行させた。この反省の上に立って、法律による行政のみならず、議会の制定する法律そのものの内容も大事であって憲法の制約を受けるとする「法の支配」Rule of Lawという考えが浮上した。法の支配は、個人の尊厳を最高の価値として認め、国家がその認識の上に立って、憲法で個人の基本的人権を保障し、法律といえどもそれを侵すことを許さず、裁判所の権威によってその保証を確保しようとする思想である。
法治主義を原理とする国家は法治国家と呼ばれる。法治国家は、自由権の保障を特色とする場合に自由主義法治国家と呼ばれ、社会権の保障を特色とする場合に社会的法治国家と呼ばれる。
法の支配という観念は、もともと不文憲法を持つことを背景にしてイギリスで成立し、コモン・ロー(普通法)という不文法が議会の立法に優位すると考えられ、議会の立法に対する制約原理として機能した。一六八八年の名誉革命後、議会の絶対性を意味する「議会主義」の観念が成立すると、法の優位は法律の優位に席を譲るが、法の支配の中に見られた法の尊重、裁判所への信頼、個人権の重視の伝統は、議会が恣意的に権力を行使することを抑制する原理として引き継がれた。
……。
出典:松澤浩一編著『憲法論』(八千代出版)十九~二十ページ。

めも。